代謝
有機体が外界から取り入れた無機物や有機化合物を素材として行う一連の合成や化学反応 / ウィキペディア フリーな encyclopedia
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代謝(たいしゃ、英: metabolism)とは、生物の生存と機能に不可欠な一連の化学反応である。代謝の主な機能は大きく3つあり、食物を細胞プロセスを実行するためのエネルギーに変換すること、食物をタンパク質、脂質、核酸および一部の炭水化物の合成に必要な構成成分に変換すること、そして代謝廃棄物(英語版)を排出することである。酵素が触媒するこれらの反応によって生物は成長し、繁殖し、構造を維持し、環境に対応することができる。また、代謝という言葉は、消化、細胞内外・細胞間の物質輸送など、生体内で起こるすべての化学反応の全体を指すこともある。この文脈において、上記のような細胞内で起こる一連の反応を中間代謝(英: intermediary metabolism)と呼ぶ。
代謝反応は、化合物の分解を伴う異化作用(例:細胞呼吸によるグルコースからピルビン酸への変換)と、化合物(タンパク質、糖質、脂質、核酸など)の合成を伴う同化作用(生合成ともいう)に大別される。一般に、異化作用はエネルギーを放出し、同化作用はエネルギーを消費する。
代謝経路は、ある化学物質が別の化学物質に変換される一連の化学反応で、それぞれの段階は特定の酵素によって促進される。酵素は、エネルギーを必要とし、自然には起こらない望ましい反応を、エネルギーを放出する自発的な反応(英語版)と結びつける(英語版)ことで、生物が推進することを可能にするため、極めて重要な役割を担っている。酵素は触媒として働き、反応速度を速めるとともに、細胞の環境の変化や他の細胞からのシグナルに応答するなど、代謝反応を調節することができる。
どの物質が栄養になり、どの物質が毒になるかは、その生物に固有の代謝系によって決まる。たとえば、ある種の原核生物は硫化水素を栄養とすることができるが、このガスは動物にとっては有毒なものである[1]。生物の基礎代謝率は、こうしたすべての化学反応によって消費されるエネルギー量の尺度である。
さまざまな生物種において、基本的な代謝経路が驚くほど類似していることは、代謝の顕著な特徴である[2]。たとえば、クエン酸回路の中間体としてよく知られている一連のカルボン酸は、知られているすべての生物に存在し、単細胞の大腸菌(Escherichia coli)からゾウのような巨大な多細胞生物にいたるまで見い出されている[3]。このような代謝経路の類似性は、生命の歴史(英語版)の中で早くから出現し、その有効性によって持続しているためと考えられる[4][5]。II型糖尿病、メタボリックシンドローム、がんなどの特定の疾患では、正常な代謝が乱されている[6]。がん細胞の代謝も正常細胞の代謝とは異なっており、この違いを利用して、がんに対する治療介入の標的を特定できる可能性がある[7]。