1月16日の夜に
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『1月16日の夜に』(いちがつじゅうろくにちのよるに、Night of January 16th)は、アイン・ランドによる戯曲である。"マッチ王"と呼ばれたイーヴァル・クルーガーの死に着想を得ている。劇の全体が、殺人事件を審理する法廷を舞台に進行する。この作品の珍しい特徴として、陪審員の役が観客の中から選ばれる。劇中の法廷では、ビジネスマンのビョーン・フォークナー(Bjorn Faulkner)の元秘書で愛人だったカレン・アンドレ(Karen Andre)が、フォークナーを殺した被疑者として審問される。フォークナーが死に至った事件そのものは描写されず、陪審員役の観客は、法廷に呼ばれた証人の証言に基づき、アンドレが有罪かどうかを判断しなければならない。劇の結末は、陪審員役の観客が下す評決によって変わる。作者ランドの意図は、評決を通じて陪審員が「個人主義」と「順応」のどちらを好むかを明らかにしながら、「個人主義」と「順応」の矛盾をドラマチックに描き出すことにあった。
1月16日の夜に Night of January 16th | |
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ブロードウェイ公演のチラシ | |
作者 | アイン・ランド |
国 | アメリカ合衆国 |
言語 | 英語 |
ジャンル | 法廷ドラマ |
初出情報 | |
初出 | 舞台公演 |
初演情報 | |
公演名 |
Woman on Trial(裁判にかけられた女)の題で1934年10月22日公演 Night of January 16th(1月16日の夜に)の題で1935年9月16日公演 |
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この戯曲は『裁判にかけられた女』(Woman on Trial)のタイトルで1934年にロサンゼルスで初上演され、批評家から肯定的な評価を受け、興行的にもまずまずの成功を収めた。プロデューサーのアル・ウッズ(Al Woods)はタイトルを『1月16日の夜に』(Night of January 16th)に変更し、1935年からブロードウェイで上演した。ブロードウェイ公演は陪審の利用で注目を集め、数ヶ月にわたって上演され続けた。ヒロインのカレン・アンドレ役のドリス・ノラン(Doris Nolan)は、批評家から肯定的な評価を受けた。ノランは本作品がブロードウェイでのデビュー作だった。その後複数の地方公演が行われた。1973年に『ペントハウス・レジェンド』(Penthouse Legend)のタイトルで上演されたオフ・ブロードウェイでのリバイバルは、商業的に失敗で、批評家からの評価も否定的だった。
ブロードウェイ公演にあたり、プロデューサーのウッズはランドに脚本の変更を求め、ランドとたびたび衝突した。ウッズとランドの衝突は、ウッズが戯曲上演料の一部をスクリプト・ドクターへの支払いに当てていることにランドが気付き、業界団体の調停機関に仲裁を申し立てた時、頂点に達した。脚本が変更されたブロードウェイ公演とアマチュア劇団向けに出版されたその書籍版をランドは好まず、1968年には自ら編集した書籍版を「決定版」と題して出版させた。1941年には、この戯曲を土台にした映画が公開された。また、テレビドラマおよびラジオドラマにも翻案された。