海底堆積物
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海底堆積物(かいていたいせきぶつ)、または海洋堆積物(かいようたいせきぶつ)は、海底に蓄積した不溶性粒子の堆積物のことである。これらの粒子は、土壌や岩石に由来し陸地から主に河川を経由して海まで運搬されてきたものや、風によって運ばれた塵、氷河などによって運ばれ海に流れ込むものが含まれる。また、海洋生物や海水中の化学的沈殿物、および海底火山や隕石の残骸なども含まれている。
中央海嶺の数km近辺などの火山岩が多く見られる例外的な場所を除いて、海底の大半は堆積物によって覆われている。堆積物を構成する成分の由来源は複数あり、その組成は非常に多様である。海底の堆積物の厚さは、数mmから数十kmに及ぶ。海底堆積物は海面近くでは未固結のままであるが、数百mから数千mの深さでは水圧のため堆積物が石化(岩石化)する。
堆積物の蓄積速度は、海洋の大部分では非常に遅く、明確な堆積物の層が形成されるまでに数千年もの時間がかかる。陸地から運ばれた堆積物は最も速く蓄積し、粗い粒子の場合は1000年あたり1m以上の速度で堆積することもある。また、流量の多い大河川の河口付近などでは、堆積速度がさらに桁違いに早くなる可能性がある。一方で、生物起源の軟泥などは 1000年に約1cm程度の速度で蓄積し、小さな粘土粒子に至っては1000年に約1mm程度の速度で堆積する。
陸地からの堆積物は、地表流出、河川流出、およびその他のプロセスによって大陸斜面に堆積し、さらに濁流によって大陸斜面から深海底まで運ばれる。そして深海底に蓄積された堆積物は、中央海嶺から広がるプレートの動きに従って、地球の内部にゆっくりと沈み込んでいく。内部に取り込まれた堆積物は溶融し、その一部は溶岩流や熱水噴出孔から放出されることで再び地表へと戻る。
堆積物は、多数の底生海洋生物、特に海洋微生物にとって重要な生息場所となっている。堆積物の化石には、過去の気候、プレートテクトニクス、海洋循環パターン、主要な絶滅のタイミングなどに関する情報が含まれており、学術的にも重要な研究題材である[1]。