イリタトル
スピノサウルス亜科の恐竜 / ウィキペディア フリーな encyclopedia
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イリタトル(イリテーターとも、学名: Irritator、「苛立たせる者」の意)は、約1億1000万年前にあたる前期白亜紀のアルビアンで現在のブラジルに生息した、スピノサウルス科に属する獣脚類の恐竜の属。アラリペ盆地(英語版)のロムアルド累層(英語版)で発見されたほぼ完全な頭骨から知られ、化石商人がこの頭骨を入手して州立シュトゥットガルト自然史博物館(英語版)に違法販売した。1996年、この標本はタイプ種 Irritator challengeri のタイプ標本に指定された。属名は「苛立ち」を意味する "irritation" に由来し、頭骨が収集家により酷く損傷して変造されたと考えた古生物学者の感情を反映している。種小名はアーサー・コナン・ドイルの小説の架空の人物チャレンジャー教授への献名である。
イリタトル Irritator | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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国立科学博物館のイリタトルの骨格。頭骨から後ろは本属と確定していない標本に基づく | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
地質時代 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
前期白亜紀アルビアン ~110 Ma ↓ | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
分類 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Irritator David Martill et al., 1996 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
シノニム | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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種 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
1996年の下半期に記載された吻部先端から知られる Angaturama limai をイリタトルのジュニアシノニムの可能性があるとみなす研究者もいる。いずれもアラリペ盆地の同じ層序単位から産出しており、以前イリタトルとアンガトラマの頭骨部位は同じ標本のものであるとも提唱されていた。この提唱は疑わしい点もあるが、同じ動物であるか否かを確定させるためにはさらに重複した化石標本が必要である。ロムアルド累層から回収された他のスピノサウルス科の骨格要素にはイリタトルあるいはアンガトラマに属しうるものもあり、それを利用して2009年にブラジル国立博物館の展示用にレプリカ骨格が製作された。
イリタトルは全長6 - 8メートル、体重約1トンと推定され、最小のスピノサウルス科の1つである。上下に浅く細長い吻部には、鋸歯状構造を持たず真っ直ぐな円錐形の歯が並んでいた。頭部の縦方向には矢状隆起が走り、そこに強力な首の筋肉が固定されていた可能性が高い。外鼻孔は吻部先端から遥か後方に位置し、堅い二次口蓋は摂食の際に顎を強化していた。亜成体の Irritator challengeri のホロタイプ標本は、これまでに発見された中で最も完全に保存されたスピノサウルス科の頭骨である。アンガトラマの吻部先端はロゼット状の形状で側方へ広がり、長い歯と高い鶏冠を持っていた。他のスピノサウルス科と同様に、第1指の鉤爪が肥大して背中には帆が走っていたことが、おそらくイリタトルのものである骨格から示唆されている。
イリタトルは当初誤って翼竜とされた後、マニラプトル類の恐竜とされ、1996年にスピノサウルス科の恐竜として同定された。ホロタイプ標本の頭骨が完全に揃った後、2002年の再記載で分類が確定した。イリタトルとアンガトラマはいずれもスピノサウルス亜科に属する。イリタトルは現在のワニのようにジェネラリストの捕食動物であったことが提案されており、主に魚類、他には仕留められる小型動物を捕食していた可能性がある。化石証拠としては、翼竜を狩るかその死体を漁るかして捕食した個体が知られている。イリタトルは半水棲の可能性があり、乾燥地域に囲まれた沿岸のラグーンの熱帯環境に生息していた。本属は他の肉食獣脚類だけでなくカメやワニ、大量の翼竜や魚類と共存していた。